フリーランスカメラマンとして2年目を迎えた平井颯太さん。
今ではフリーランスで月収80〜100万円規模を稼ぐまでになったが、スタートはつい数年前のこと。
もともとカメラとはまったく縁のないサラリーマンだったという。
SNS集客に行き詰まり、チラシを2箱印刷してイベントに乗り込んで空振り、収入ゼロの期間が続いた
——そんなリアルな失敗談を笑いながら語る平井さんに、カメラマンとして独立を目指す人が知っておくべき「本当のこと」を聞いた。
この記事では
・カメラマンとして収入を得たい
・店舗撮影の仕事に興味がある
・どうやって案件を取ればいいかわからない
そんな方に読んでほしいインタビュー記事です。
現在は店舗撮影を中心に幅広い撮影ジャンルで活動する平井カメラマンの実例をもとに、
・仕事内容
・収入
・仕事の取り方
を具体的に解説します。
平井颯太さんの自己紹介
| 平井颯太と申します。
フリーランスのカメラマンとして活動しており、現在2年目になります。 前職は日本製鉄株式会社のグローバル職として勤務していました。 撮影ジャンルは幅広く対応していますが、メインは店舗撮影で、飲食店や美容サロン、美容室、病院、事務所などの内装撮影や、施術シーンの撮影などを行っています。
また、民泊物件の撮影にも力を入れており、Airbnbなどに掲載される室内写真やWebサイト用のビジュアル制作も担当しています。
さらに、七五三などの記念撮影にも対応しており、個人のお客様から法人まで、さまざまなニーズにお応えしています。
用途や目的に合わせて、価値の伝わる写真をご提供できるよう心がけています。 |
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カメラマンになったきっかけ
フリーランスカメラマンを目指す人の入り口はさまざまだ。
幼い頃から写真が好きだった人、映像の仕事をしていてカメラに移行した人、副業から始めてそのまま独立した人。しかし平井さんのきっかけは、少し違った。
「直近まで写真を撮るタイプでは全くなかった」と語る平井さんのカメラマン人生は、突然の家族の別れから始まった。
対話 ── お父さんの死が、カメラとの出会いに
鈴木:
平井さんはもともとカメラに興味があったわけではなかったんですか?
平井:
はい、SNSで写真を上げるタイプでもなかったし、全くそういう人間じゃなかったんですよ。ところが、今から2年前に父がくも膜下出血で急に亡くなりまして。
鈴木:
それは辛かったですね。
平井:
葬式の時に、父の人生がわかるように、生まれてから人生の変遷が分かる写真をアルバムから引っ張り出してボードを作ったんです。その時に「写真って生きた証になるな」って、すごく意義を感じて。
ちょうどボーナスも入っていたので、ヨドバシカメラに走っていって一眼レフを買ったのがスタートです。
鈴木:
即決独断ですね。
平井:
ほぼそうですね(笑)。でもそこから技術を学ぶスクールに通って、知識をつけて、独立して今に至るという流れです。
最初の仕事
カメラマンが最初に収入を得るルートとして一般的なのが、出張撮影のマッチングサービスへの登録だ。
七五三・お宮参り・ウェディングなど、個人向けの記念撮影需要とカメラマンをつなぐプラットフォームで、認定カメラマン資格を取得することで受注できるケースが多い。
スクールで技術を学びながら実績を作っていくというステップは、ゼロからフリーランスカメラマンを目指す人にとって現実的なルートのひとつになっている。
対話 ── 秋の繁忙期にちょうど滑り込む
鈴木:
初めてお金をもらった撮影は何でしたか?
平井:
スクールのプロコースで技術を学んで認定カメラマンになり、そこから大手出張撮影サービスのカメラマンになりました。で、最初にいただいた依頼が七五三です。
鈴木:
七五三!
平井:
ちょうど始めた時期が七五三の繁忙期、秋の時期だったので。自動マッチングで「撮影してほしい」という方とつなげてもらう形でしたね。タイミングも良かったと思います。
最初の壁
フリーランスカメラマンとして独立した直後、多くの人が直面するのが収入の不安定さだ。
マッチングサービスで案件は取れても、単価が低く「食べていける」レベルには届かない。
そこで自分で営業して仕事を取りにいくステップが必要になるが、ここに最初の高い壁がある。
SNSを使ったBtoCの集客、DM営業、モニター撮影でのポートフォリオ作り
——多くのカメラマンが試みるこれらの手法だが、すぐに収入につながるかというと、現実はなかなか厳しい。
対話 ── 1,000件送って3〜4件の返信。SNSの「暗闇」に迷い込む
鈴木:
独立してすぐ、どんな壁にぶつかりましたか?
平井:
2025年の1月に独立したんですけど、最初はマッチングサービスの案件を一生懸命もらっていたんですが、単価が安くてギリギリ食べていけるかどうかというレベルで。
鈴木:
それで自分で仕事を取りにいこうと。
平井:
美容サロンの店舗撮影に照準を当てて、インスタのDMでいろいろ送ったんです。最初はポートフォリオを作りたいからって無料で撮らせてくださいって。でも100件送って1件返信があればいいかなというくらいで。
鈴木:
厳しい数字ですね。
平井:
で、せっかく返信が来ても「無料ならいいよ」という方が多くて、有償には全然ならなかった。独立して3〜4ヶ月は、マッチングサービス以外の収入はほぼゼロという状態でした。
鈴木:
その頃はどんなことをやっていたんですか?
平井:
みんながやってるからってリール動画もいっぱい作りました。バズらせようと思って。でも全然当たらなくて、暗闇にひたすらボールを投げてる感じで。
フォロワーが増えても収入に直結するわけじゃないって最近ようやく実感したんですが、当時はそこにはまっていましたね。
鈴木:
「暗闇にボールを投げてる」、めちゃくちゃわかりやすい表現(笑)。
平井:
本当に正直そんな感じで。これが収入に直結するわけじゃないのに、ひたすら作り続けてましたから。
壁の乗り越え方
フリーランスの集客における「空中戦」と「地上戦」という考え方がある。
空中戦とはSNSやWebを活用したオンライン集客。地上戦とは直接人と会い、リアルな関係を築く対面営業だ。
SNS集客は再現性が低く、成果が出るまでに時間と運が必要になることが多い。
一方、対面の信頼関係から生まれる仕事は成約率が高く、紹介へとつながりやすい。
特にカメラマンという「人が依頼するサービス業」では、この差が顕著に出る。
対話 ── 経営者コミュニティとの出会いが転機に
鈴木:
どうやってその壁を乗り越えたんですか?
平井:
DMで美容サロンに営業していた中で、あるサロンの関係者の方がインテリアデザイナーを紹介してくださって、そこからビジネスコミュニティに招待してもらったんです。招待制のコミュニティで。
鈴木:
それがターニングポイントになった。
平井:
そうですね。入ったからといっていきなり仕事をくださいって言っても相手にされない。だから最初はひたすら「自分ができること」を探して、イベントがあると聞けば「撮りますよ」って、お金はいらないですって言ってクオリティの高い写真を渡して。そこで信頼を築いていって、「こういう仕事が欲しいんです」って言えるようになったら、紹介してもらえるようになったんです。
鈴木:
SNSという空中戦から、直接人と会う地上戦に切り替えた感じですね。
平井:
まさにその表現がぴったりです。リール動画をいくら作っても暗闇にボールを投げてる感じだったのが、人に会い始めてから変わりました。カメラって写真をもらって嬉しくない人はほとんどいないので、貢献しやすいツールなんですよ。それを生かせたのが大きかった。
仕事が増えたきっかけ
フリーランスカメラマンの集客において、最も強力なルートのひとつが「紹介」だ。
一度信頼を得た相手が別の人を紹介し、その人がまた別の人を——という連鎖が生まれると、仕事は自然に増えていく。
紹介が起きやすくなるためには、単に「いい写真を撮る」だけでなく、「この人に頼みたい」と思われる信頼関係の構築と、「どんな仕事を求めているか」を明確に伝える発信が必要になる。
対話 ── コミュニティへの貢献が、ご縁を引き寄せる
鈴木:
仕事がどんどん増えたきっかけって、何だったんでしょう?
平井:
コミュニティに入っただけじゃなくて、そこへの貢献を徹底したことですね。イベントの撮影を買って出て、クオリティの高い写真を渡す。
「平井くんにいろいろやってもらってるから協力してあげたいな」って思ってもらえる関係を先に作った。
鈴木:
下心なしに、まず与えることから。
平井:
そうですね。ある程度信頼を築けたら「こういう人を探してるんです」「こういう仕事がしたいんですよ」って言うと、「あの人知ってるから紹介するよ」ってなってくれる。それが小さく小さく始まって、広がっていった感じです。
鈴木:
カメラマンならではの貢献の仕方ですね。
平井:
特にカメラマンは貢献しやすいんですよ。写真もらって嬉しくない人ってほとんどいないので。自分の技術を生かして貢献し続けること、遠回りに見えるけど結果的にそれが一番の近道だったと思います。
現在の仕事
フリーランスカメラマンの仕事は多岐にわたる。
ウェディング、七五三・お宮参りなどのライフイベント系、企業の広告・ウェブサイト用の商業撮影、飲食店や美容サロンの店舗撮影、不動産・民泊の内装撮影など。独立当初はジャンルを絞らず幅広く受けながら徐々に単価の高い専門分野を確立していく、というのが現実的なキャリアパスだ。
平井さんは現在、複数のジャンルを並行させながら、特に高単価の専任案件を収入の柱にしている。
対話 ── 伝統工芸品のECサイト専任カメラマンが収入の半分
鈴木:
今はどんな撮影が中心ですか?
平井:
一番大きいのが、日本の伝統工芸品やサービスを海外などのVIP向けに販売するECサイトの専任カメラマンです。とても高級なお茶とか、高級な日本酒だったり。そういうものを海外に売るチームに入っていて。
鈴木:
それが月に何件くらい?
平井:
多い時で月に7〜8件ですね。その次が民泊撮影で、3〜4社と組んでいて月に4〜5件。あとは店舗撮影、スクール撮影(小中学校・幼稚園・保育園)、七五三やお宮参り、経営者の宣材写真、最近はスポーツ撮影もやっています。
鈴木:
収入の割合としては?
平井:
ECサイトの撮影が全体の約50%。民泊が約30%。店舗撮影やスクール撮影が各10%くらいの感じです。
収入のリアル
フリーランスカメラマンの収入は、ジャンルや営業力によって大きく異なる。
マッチングサービス中心では月10〜20万円台にとどまることも多い一方、商業撮影・企業案件を軸にした場合は50万円以上も十分に射程内だ。
ただし、フリーランスである以上、時期による変動は避けられない。
「平均月収」よりも「月収の振れ幅」を理解した上で収入設計することが重要になる。
対話 ── いい時は月100万超、ならすと…
鈴木:
実際の月収ってどのくらいか、教えてもらえますか?
平井:
ECサイトの撮影だけで1回あたり8〜9万円いただいていて、それが最低でも月5回はありますから、そこだけで40万円前後になる。それが収入全体の半分なので、全体では…。
鈴木:
ざっくり80〜100万くらいですか?
平井:
いい時はそのくらいですね。ただ、時期によってムラがありますし、本当にいい時と落ち着いてる時ではかなり差があります。フリーランスですから。ならしてみるとどうかというのは、正直まだ1年走り切ったところなので。
鈴木:
でも独立1年でそこまで来たのはすごい。
平井:
そこはまあ、走り回った甲斐があったかなと(笑)。
集客方法
カメラマンの集客方法は大きく分けると、SNS・ポートフォリオサイト・プラットフォームを活用した「オンライン集客」と、直接人と会う「オフライン集客」がある。
特にBtoBの商業撮影では、担当者が「信頼できるカメラマン」を求めて動くため、紹介・口コミが強力に機能する。
平井さんが実践するのは、「コミュニティへの貢献→信頼構築→紹介連鎖」という地道だが再現性の高いモデルだ。
対話 ── SNSはほぼ機能していない。集客の9割は紹介
鈴木:
今の集客チャンネルってどこが中心ですか?
平井:
ここが変わってるかもしれないんですが、基本的にSNSはほぼ機能していないんです。集客のほぼ全部が人からの紹介です。
鈴木:
え、本当に?
平井:
独立する前は自分もSNSやらなきゃと思ってたんですよ。でも成功している全然違うジャンルの人に「どうやって稼いでるの?」って聞いたら「人からの紹介で」って言われて。
最初はよくわからなかったんですが、今はやっとわかります。
鈴木:
具体的にはどうやって?
平井:
コミュニティで自分ができることをやり続けて、信頼を築いたら「こういう仕事を探しています」「民泊の関係者いたら紹介してください」って常に発信する。で、経営者さんって横のつながりが広いので、1人は誰かしら知ってるっていうケースが多くて。そこでZoomして仕事をもらったり。
鈴木:
紹介からの問い合わせって、プラットフォーム経由と比べてどう違いますか?
平井:
圧倒的にやりやすいですね。プラットフォームだと「あなたいくらですか、あっちは安いですよ」みたいな比較が前提で来ることもありますが、紹介だとある程度信頼が担保されているので、スタートラインが違う。
頼む側からしても、誰か知っている人から「この人信頼できるよ」って紹介されるほうが安心じゃないですか。
印象に残っている撮影
カメラマンという仕事の醍醐味のひとつは、お金以上の「報酬」が存在することだ。
撮影された人が喜ぶ瞬間、感謝の言葉、「あの写真、今でも飾ってます」という一言——そうした体験が、仕事を続ける原動力になる。
七五三やお宮参り、家族撮影といったライフイベント系の撮影は、特にその体験が色濃い。
スタジオ撮影とは違い、屋外でのロケーション撮影は子どもの自然な表情を引き出しやすく、独自の価値を持っている。
対話 ── スタジオで1枚も撮れなかった女の子に、笑顔が咲いた
鈴木:
これまでで一番印象に残っている撮影を教えてください。
平井:
七五三の撮影で、3歳の女の子のケースがあって。実は僕に依頼してくれる前に、すでにスタジオで撮影を試みたんですが、怖がってしまって1枚も撮れなかったと。
鈴木:
それで外でならどうかと。
平井:
「外ならもしかしたら心を開いてくれるかも、ダメ元でお願いします」って依頼してくれて。事前にいろいろヒアリングしたら、ミニオンが大好きって聞いたので、おもちゃ屋さんに走ってミニオンのグッズを買って持っていきました。
鈴木:
それはやる気が伝わりますね。
平井:
撮影中も僕がミニオンのおもちゃを頭に乗っけたりして(笑)。最初は警戒していたんですが、徐々に心を開いてくれて、最終的にすごい笑顔の写真が撮れたんです。
鈴木:
納品した後はどうでしたか?
平井:
めちゃくちゃ感謝してくださって。しばらくしたら高級なお肉まで送ってきてくださって(笑)。「本当にありがとうございました」って。
サラリーマン時代って、直接「ありがとう」って言われる機会ってあまりなかったんですよ。
でもカメラマンだと、目の前でダイレクトに喜んでもらえる。
これが自分の仕事なんだって、すごく実感できた撮影でした。
撮影で大事にしていること
プロとして写真を撮る仕事をする上で、しばしば混同されるのが「カメラマン」と「写真家」の違いだ。写真家(フォトグラファー)は自分の表現を追求するアーティスト。
一方、カメラマンは依頼者のニーズに応える職人だ。この区別を理解していないと、「自分の好きな色を出したい」「自分らしく撮りたい」という自我が先行し、お客様が求めているものとズレが生じる。
ビジネスとしてカメラをやっていく上で、この視点の切り替えが重要になる。
対話 ── カメラマンと写真家を履き違えない
鈴木:
撮影で大事にしていることを教えてください。
平井:
カメラマンであって写真家じゃないってこと、これがすごく大事だと思っています。カメラマンになってくると自分の撮りたい色を出したいとか自我が出てきがちなんですが、僕たちはカメラマンなので、求めている相手がいて、その要望にしっかり応えることが前提です。
鈴木:
簡単そうで難しい。
平井:
そうなんです。事前準備と追加のヒアリングが大事で、お客様が求めていることを徹底的に聞いて理解する。それをベースに撮影する。必ずお客様目線に立って考える、これが一番気をつけていることですね。
鈴木:
もう一つ大事にしていることはありますか?
平井:
自分の「できること」をしっかり人に伝えて、貢献していくことです。カメラという自分のアイデンティティを持って、写真を撮ることで誰かに貢献していくという気持ちを誇りを持って続けること。
それが仕事にも、人間関係にもつながっていくと感じています。
これからの目標
生成AIの台頭により、多くの職業が自動化の波にさらされている。
カメラマンという職業はどうか。AIによる画像生成技術は急速に進化しているが、「体験価値」という観点では、カメラマンによる撮影は依然として代替しにくい。
ウェディングを例に取れば、お客様が望んでいるのは美しい写真だけでなく、素敵な場所でドレスを着て、プロのカメラマンと時間を共有するという体験そのものだ。
それは生成AIには提供できない。
対話 ── ロールモデルになること、そして児童養護施設への夢
鈴木:
これからどんなカメラマンになっていきたいですか?
平井:
まず一つは、サラリーマンから全く写真を知らない状態から始めた自分が、ロールモデルになりたいということ。今まさに似たような状況にいる人の「こういうルートがあるんだ」という希望になれたら、と思っています。
鈴木:
AI時代の話もされていましたよね。
平井:
カメラマンという仕事はAIが出てきても残りやすいと思っていて。ウェディングで後ろに海の写真を合成して「はいどうぞ」って言われても嬉しくないじゃないですか。
実際に行って、綺麗な格好をして、その場所でプロに撮ってもらうという体験ごと届けているのが僕たちの仕事なので。
鈴木:
もう一つの夢があると聞きました。
平井:
児童養護施設でカメラマンとして活動して、親代わりに写真を撮る活動をしたいんです。自分の父を亡くした経験もあって、写真って本当に生きた証になるものだと思っているので。
お宮参りや七五三を依頼してくださるお客様に届けているような幸せを、本来は届けられるはずの子どもたちにも届けたい。
そういう活動を、カメラマンとしてやっていきたいなと。
初心者へのアドバイス
スマートフォンの普及とカメラの高性能化により、写真を撮る敷居は格段に下がった。
それはチャンスである一方、「誰でもそこそこいい写真が撮れる」という市場の競争激化でもある。
カメラマンとして食べていくには、写真の技術だけでなく、「仕事を取る力」が不可欠だ。
そして仕事を取るための最も確実な方法は、実は泥臭いリアルなコミュニケーションにある。
対話 ── 泥臭くていい。足を動かして人と会え
鈴木:
これからカメラマンを目指す初心者に、アドバイスをお願いします。
平井:
カメラマンという仕事は、芸術センスがなくてもある程度ノウハウ通りにやれば良いクオリティを出せるので、クリエイティブの中でも誰でも始めやすい仕事だと思っています。
鈴木:
だからこそ?
平井:
だからこそ、差別化や営業が難しい。独立したら誰もが苦労するところだと思うんですが、仕事っていうのは人と人の関わり合いで成り立っているので、SNSだけじゃなく、直接人と会って信頼を築くのが結局一番の近道です。泥臭いけど。
鈴木:
対面を大事に。
平井:
カメラマンは現場に行かないと写真が撮れない仕事なんで、自分で足を動かすことが仕事の獲得にも直結する。それと、自分の家族とかかけがえのない時間を記録するっていうのは本当に意義のある仕事なので、そこに誇りを持ってやってほしいなと。
過去の自分へのアドバイス
会社員という環境は、ある種の閉塞性を持つことがある。
「ここしか生きる道がない」という近視眼的な思考に陥りやすく、それが行動の足かせになることも。しかし一歩コミュニティの外に出てみると、まったく違う世界が広がっている。
キャリアチェンジやフリーランス転身を考えている人は多い。
「一歩踏み出す」ことへの恐怖は誰もが持つ。
しかしその恐怖の向こう側に何があるかを、実際に踏み出した人のリアルな言葉として聞くことが、背中を押すきっかけになる。
対話 ── 「そこしかない」は思い込みだった
鈴木:
過去の自分にアドバイスできるとしたら?
平井:
サラリーマン時代に戻るとしたら、「視野が狭くなるな」ということですね。仕事が辛かったり体を壊してしまったりした時期もあって、そこしか生きる道がないって思ってた時期もあったんですよ。
鈴木:
会社勤めをしていると、そういう思考になりますよね。
平井:
全くそんなことないよ、って過去の自分に言いたいです。趣味のコミュニティに行ってみるとか、普段と違う一歩を踏み出すだけで全く違う世界が待っていて。まさか2年後に独立してカメラで稼いでるなんて、3〜4年前の自分には想像もできなかったことなんで。
鈴木:
決断がもっと早ければ、とも思いますか?
平井:
そう思う部分もありますけど、今のうちに行ってよかったとも思うし、後悔は全くないですね。過去の自分に言うとしたら…可能性を信じて、行動してみろってことですかね。ありきたりな言葉かもしれないですけど。
最大の失敗
フリーランスカメラマンとして独立した初期に多い失敗には、いくつかのパターンがある。
SNSに過度に依存して収入につながらない期間が続く、効果のわからない広告に投資してしまう、無駄なスクールや講座にお金を使う、などだ。
「失敗は授業料」という言葉があるが、何かを試みて結果を検証することは、正しいアプローチを見つけるためのプロセスでもある。
対話 ── 10数万かけてチラシ2箱、客ゼロ
鈴木:
これまでで最大の失敗を教えてください。
平井:
カメラマンとしての一番の失敗といったら……美容サロンの撮影に照準を定めていた頃に、ビューティーワールドというめちゃくちゃ大きいイベントがあったんです。そこにスーツを着て、訳のわからないチラシを2箱作って「全部配るんだ!」って乗り込んだんですが。
鈴木:
どうなりましたか?
平井:
門前払いを食らって(苦笑)。準備でトータル10数万かけたのに、3日間走り回って飛び込み営業もしたけど、客は1人も来なかった。
チラシ代もデザイン代も何にもならなかったという経験があります。
鈴木:
それは辛い……。
平井:
でもそれがあって、やっぱり人と会うことの大切さに気づけたんです。チラシ配りもリール動画も、その時の「正解がわからない中での試行錯誤」があったから、今の答えにたどり着けたわけで。
無駄じゃなかったとは思っています。
使用機材
プロのカメラマンとして仕事をする上で、機材は重要な投資先だ。
特に「2台体制」は多くのプロが実践する基本中の基本。1台が故障した場合のリスクヘッジと、異なる焦点距離のレンズを付け替える手間の軽減、という2つの理由がある。
SONYのαシリーズはミラーレス一眼カメラとして高い評価を持ち、プロカメラマンの間でも広く使われている。
α7 IVは約3300万画素のフルサイズセンサーを搭載し、静止画・動画ともに高い性能を誇る。
対話 ── SONY α7 IV × 2台、「良い機材を使う」という哲学
鈴木:
使っている機材を教えてください。
平井:
基本的に「絶対いいものを使おう」が方針です。いいものを使って写真が駄目だったら自分のせいだって責任が取りやすい。カメラはSONYのα7 IVを2台使っています。プロなら2台マストですね。
鈴木:
レンズはどれをよく使いますか?
平井:
一番使うのは24-70mm F2.8 GMですね。カメラマンの定番で万能です。あとは最近買って一番良かったのがTAMRONの35-150mm F2.8-4。明るくて、これ1本でかなりカバーできます。
重さだけがネックですが、クオリティは文句なし。
鈴木:
内装撮影など広角が必要な時は?
平井:
16-35mmをよく使います。民泊の内装撮影なんかはこれですね。業務が広がると単焦点よりズームレンズが中心になっていきますね。
お気に入りのレンズ
カメラマンの機材選びにおいて、単焦点レンズとズームレンズの使い分けは定番の議題だ。
単焦点レンズは開放F値が明るく、描写が鮮明で独特のボケ感を出しやすい。
ズームレンズは焦点距離を変えられる汎用性があり、撮影中に素早く画角を変えられる利点がある。
趣味として楽しむ段階では単焦点の楽しさが際立つが、多様な案件をこなすプロになると、実用性からズームレンズを選ぶケースが増えていく傾向がある。
対話 ── 40mm単焦点への愛と、ズームへの移行
鈴木:
一番のお気に入りレンズはどれですか?
平井:
個人的に一番好きなのはSONYの40mm単焦点です。小さくて軽くて、スナップ撮ったり旅行で持っていったりするのにめちゃくちゃ良くて。
鈴木:
でも仕事では使えなくなってきている?
平井:
そうなんですよ。業務の幅が広がると、ズームじゃないと対応できないシーンが増えてくる。だから仕事ではほぼ使わなくなりましたが、好きなレンズというのは変わらないですね。プロとして使うレンズと、個人的に好きなレンズって別ものなんだなって実感しています。
使っているパソコン
写真の現像・レタッチにはある程度のPC性能が必要になる。
LightroomやPhotoshopを快適に動かすには、RAW現像を高速処理できるプロセッサと、大容量のストレージが求められる。
AppleのM1チップ以降のMacBookは、コストパフォーマンスが高く、バッテリー持ちも良いため、外出先での作業が多いカメラマンに人気だ。
ただし、大容量のRAWデータを扱う場合はストレージ容量と処理速度に注意が必要になる。
対話 ── MacBook Air M1、中古で「まず始める」
鈴木:
レタッチはどんなパソコンでやっていますか?
平井:
MacBook Airです。M1チップのやつで、2TBのストレージです。デビュー当時は費用を抑えたくて中古で買いました。
鈴木:
今も現役で?
平井:
使えてはいますが、正直少し遅いなと感じてきていて、そろそろ買い替えたいなとは思っています(笑)。でもM1でも仕事はできているので、最初から高いものを買わなくていいというのは証明できているかな、と。
まとめ──平井颯太さんが体現する「カメラマン独立の本質」
今回のインタビューを通じて見えてきた平井颯太さんの軌跡は、多くのフリーランスカメラマン志望者にとって、等身大のロールモデルとなるはずだ。
お父さんとの別れをきっかけにカメラを手に取り、スクールで学び、マッチングサービスで最初の一歩を踏み出した。
SNS集客に行き詰まり、チラシ作戦で玉砕し、それでも諦めずに人と会い続けた。
そのプロセスの先に、月収80〜100万円という現実がある。
平井さんが一貫して語ったのは、「SNSより人に会え」というシンプルなメッセージだ。
暗闇にボールを投げ続けるSNS戦略より、目の前の人に誠実に向き合い、できることで貢献し続けるほうが、結果的に仕事につながる。
カメラマンは、写真という誰もが嬉しいギフトを届けられる仕事だ。その特性を生かして貢献し、信頼を積み重ねていく。
その泥臭い地道さこそが、フリーランスカメラマンとして生き残るための「本当の近道」なのかもしれない。
平井颯太さんの使用機材まとめ
| カメラ | SONY α7 IV × 2台 |
| 標準ズームレンズ | SONY 24-70mm GMⅡ F2.8 |
| 望遠ズームレンズ | TAMRON 35-135mm F2-2.8 |
| 広角ズームレンズ | SONY 16-35mm GM F2.8 |
| お気に入り単焦点 | Carl Zeiss Batis 40mm F2 |
| パソコン | MacBook Air M1(2TB、中古) |
平井颯太さんへの撮影の依頼はこちらから



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